株価変動に観る、基本的な人生の心構え

 先日、トルコショックにより日経平均は2%マイナスという大幅下落に陥った。翌日には反対に2%超のプラスとなり、大きく反発した。筆者の知人はこの二日間に日経平均連動型の投資信託を買って売り、結果2%利益が出たわけだが(ビビリだそうなのであくまでほんの少額の話)、なかなかこんなに短期で大きく値段が動く機会もあるわけではない。自身が動かせる範囲内の金額を、勇気を出して動かしてみた結果が、たまたま運良く実ったのだ。

 

 直近の相場は米中貿易戦争の懸念から不安定な状況が続いている。日経平均やダウなどの動きを毎日見ていても、毎日のようにずっと上がり続ける(或いは下がり続ける)わけではなく、必ずあるラインで反発が生じる。おそらく運用をしている方々なら当たり前のように知っている(そして実感している)事だ。

 

 昨今ジュニアNISAなど若いうちから投資に触れる機会もあるが、その制度もここ最近の話。

 大方の人間は「リスク」という言葉を嫌い元本保証の商品以外には手を出さないか、或いは大人になり、結婚・出産・退職などの大きなライフイベントの転換期を迎える中で何等かの(将来への)不安を感じて、銀行や証券会社、保険会社で薦められたものに入るケースが殆どだろう。

 

 私自身も実は運用を始めてみた。アラサーになってからで、正直ここ半年・一年のことである。

(ただ、運用の本来の意味や意義は一旦置いておいて)私が運用を始めて本当に良かったなと思うのは、人生に対する心構えが大きく変わったということだ。

 

1.「自己責任で、自分の大事なお金を、自分で考えた範囲内で値動きのあるものに回す決断を下す事によって≪勇気を出してやってみることによって初めてわかることがある≫」

 投資信託や株は値動きがあるものだ。売却・解約のタイミングを間違えれば当然元本割れも起こりうるし、コストの事だって気になるだろう。色々な不安や雑誌の記事・ニュースから「投資」「資産運用」という言葉に懐疑的になる一方、そうは言ってもマイナス金利政策下では、銀行に預けても定期預金だけでは増えない時代だし、物価が上がるインフレ状況では当然資産の価値は目減りする。

 そんな中で始めた投資は、まずは「おためし」で。動きを見ていれば大体どれくらいの振れ幅の範囲内で動いているかを実感できるだろう。「0%になって、紙屑になる」というのは(「絶対ない」とは言い切れないが)、そこまで行く可能性が十分あるものと、なかなかそんな状態まで下がり得ない(或いは下がるまで時間がかかる)ものに別れる。詰まる所投資対象に依るのだ。

 この辺りのことは自分自身で決断し、実際に勇気を出してみて初めてわかるのだ。

 

 更に、株価が大きく下がってる時に、敢えて買ってみる。「安く買って高く売る」を信じて買ってみる。もっと下がったらどうしようという、先が見えない怖さがあるのは勿論だ。ただニュースなどを見聴きしたり、実際にチャートを見て、「理論値上は下落は長引かないor絶対戻るはずだ」と信じられるタイミングであれば「ここだ!」というところで買ってみる。

 勇気を出して買った者だけが、その代りに利益を掴めるかもしれない。

 

 普遍の真理のひとつ、「勇気を出して何かに挑戦してみれば、何かを得る事ができる。それは勇気を出さなければ決して得られなかったもの」。別に投資でなくとも構わない。日々の仕事でも、好きな人への告白も、未体験の世界へ飛び込むことも。

 年を取って、30手前になると色々なリスクや不安が頭を過る。子供の頃みたいに無鉄砲に壁にぶつかることが怖くてたまらないだろう。失うものに対する恐怖心に苛まれるだろう。

 だからこそ、「大人なりの勇気の出し方」があるのだ。考えて考えて最悪の事態まで想定して「それでもここまでなら動ける」という自分の限界に挑戦するのだ。この緊張感は、子供の頃の挑戦とはまた違った、ならではの醍醐味がある。

 

2.価格には常に波がある

 1を実行する上で、背中を押してくれるもう一つの普遍の心理が「物事は常に動いている」ということだ。

投資で言えば価格の話だが、広く言えば「何事も」状況は常に動く。「悪いことの後には必ず反発のチャンスがある」「良いことは永遠に続くわけではない」。嫌いな上司だっていつかは異動をしたり、退職する。大好きな人だっていつかは寿命を迎える。就職市場が氷河期でも、いつか経済が好転すれば(経済は不景気と好景気をサイクルしているので)自分の就職・転職だってうまくいって、自己実現が叶えば自信がつき、人生のあらゆるシーンで状況が好転していく。

 

 今ある悩みも、絶対に「変わる節目」はやってくる。好機が訪れるその時まで、じっくりと用意周到にチャンスを伺っていればいいのだ。大事なのは、ここぞのタイミングで動き、(自分の許容範囲で、リスクとリターンのバランスが最も良い状態で最大効用を意識して)チャンスを掴み取れるかどうか。

 

 戦略が伴い、不安が常に纏わりつくという緊張感の中で、まるでゲームみたいに状況を楽しみながら成長していくのは大人ならではのものだ。オトナを心ゆくまで楽しもう。